「うんちく市場」を探る
~10%でも10年続く趣味なら巨大市場~
博報堂生活総合研究所 エグゼクティブ・フェロー
関沢 英彦
経済が厳しいと、どうしても必需品の購入が優先されます。趣味に回すお金はまっ先に節約されるのが常です。しかし、低下したとは言っても、人々は毎日を楽しく過ごすためにさまざまな趣味やスポーツを行っています。趣味市場の場合、人数としては小さい集団でも、長い期間にわたって道具やサービスにお金を支出するのが特徴。同年代の10%の人々でも、彼らが10年以上の消費を続ければ、巨大市場です。
趣味人口は相変わらず大きい
可処分所得が減少しているなか、趣味にお金を回すゆとりがなくなっている。「1年を通して楽しんでいる趣味がある」という人の率は、1998年の60%から2008年は53%に低下した。同様に「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」と回答した人も、10年間で48%から38%へと落ちている。
だが、この調査結果は、現在でも20歳から69歳の5割強が趣味を常に楽しんでおり、4割弱は「一生もの」の趣味を持っているとも読める。あいかわらず、趣味人口は大きいのである。
次に、2008年の数字で性年代別の違いを見てみよう。「1年を通して楽しんでいる趣味がある」という人の率は、男性では管理職として仕事の忙しい50代に向かって低下し、退職者の増える60代で回復する。女性では、子育てが忙しい30代が底になっている(グラフ1)。

「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」という人の率は、男性では年代ごとの差が少ない。「1年を通して楽しんでいる趣味がある」と回答した人には、軽い気持ちで楽しむ層も含まれるが、「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」と答えた人の場合、趣味への「思い入れ」は極めて強いということができる。女性では、30代・40代で「一生もの」の趣味を持っている人の率が低下する。いずれにしても、男性で4割、女性で3割弱から4割の「コアになる趣味愛好家」がいることが分かる(グラフ2)。

10年選手が趣味市場を活性化する
「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」と答えた人が、10年間、その趣味を続けたとしよう。何ごとも、「10年選手」となれば腕前は上達する。彼らは、プロ仕様の道具を購入し、作品展示の場を求め、自分が会得した「うんちく」を人にも教えたくなる。
「人に教えられる趣味やスポーツがある」と自負する人は、全体平均で2割を超えている。グラフ3は、その性年代別の違いを表したものである。「趣味」だけでなく、「趣味やスポーツ」と質問しているので、若年層の比重が高くなっているが、「先生」になれるほど趣味やスポーツに打ち込む人は、かなり多いことが分かる。

彼らは、国内外を問わず、それぞれの趣味やスポーツの「本場」を見学し、自分の目を磨こうとするから、旅行需要を生み出すことになる。ブログを書く人も多い。交流サイト(SNS)の利用者が5000万人を突破したが、そのうちコミュニティの参加者は6割弱。趣味の「10年選手」は、コミュニティに集まって情報交換をしている。最近、トランクルームの需要が高まっているという。趣味用品を置く場所として活用する人も多い。住宅産業では、夫婦がともに自分の趣味を楽しめるように、間取りを工夫する会社が増えている。趣味を核にすれば、多様な市場を開拓することができる。
性年代別に見る愛好する趣味ランキング
性年代別の趣味ランキングを見ていこう。1割以上の回答者が「よくする」という趣味(スポーツを含む)を5位までまとめてみた。10%を超すものがない場合、その順位は空欄とした。
スポーツ系の趣味ランキングは、男性に比べて女性に空欄が目立つ(表1)。男性の方が、愛好者が10%以上いるスポーツが多いことを示している。男性では、サッカーが若年層、ゴルフが中年以上という図式が見て取れる。スキーは40代までファンがいる。野球は全年代で楽しんでいる人が見られる。50代以上では、登山(ハイキングを含む)が上位にランキングされてくる。
女性では、50代において、1割以上の回答者が「よくする」と答えた種目が皆無であった。60代になると、登山、ダンス(エアロビクスを含む)、水泳、ヨガ(太極拳を含む)など、意識して運動をする人が増えるようだ。女性では、スポーツ観戦を趣味として挙げる人が少ない。

遊技系の趣味も男性優位である(表2)。男性では40代まで、女性では30代まで、TVゲームが入っている。特に20代男性では、4割の人が「よくする」趣味として回答した。男性では、パチンコが全年代、競馬が30代以上でポピュラーな遊びである。カラオケは、男性女性を問わず、全年代で上位を占めている。

屋外系の趣味(旅行とショッピングは除く)にも、性年代別の特徴がよく現れている(表3)。男性では、全年代でドライブが上位に入った。20代男性では、オートバイが12%、散歩が11%となり、動と静という対照的な趣味が見られる。30代以上の男性では、釣り好きが2割前後、安定して存在する。50代以上では、園芸(ガーデニング)も人気だ。
食べ歩きは、女性に人気のある趣味行動である。遊園地(テーマパークを含む)も、上位に入っている。20代では本人が楽しみ、30代以上では子どもと楽しむということだろうか。女性では、30代以上において園芸ファンが多い。ホームセンターなどのよい顧客でもある。

文化・コンテンツ系は、映画・音楽・美術鑑賞に加えて、パソコン、ビデオ・カメラ撮影なども趣味として挙げる人が多い(表4)。読書は男女ともに年代を問わず人気があるが、美術鑑賞は女性の20代と60代のみである。伝統的な趣味である編物・手芸は、女性の30代から50代が支持している。最近、デパートでは手芸コーナーを充実させるところもある。

以上、性年代別に10%以上のファンがいる趣味ランキングを見てきた。こうした1割の層が10年間、同じ趣味・スポーツに打ち込んだ時、そこには大きな「うんちく」市場が生まれる。こだわりのあるリピーター客は、マーケティングにとって重要なコアターゲットである。
(掲載 : JRガゼット・2010年8月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。
趣味人口は相変わらず大きい
可処分所得が減少しているなか、趣味にお金を回すゆとりがなくなっている。「1年を通して楽しんでいる趣味がある」という人の率は、1998年の60%から2008年は53%に低下した。同様に「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」と回答した人も、10年間で48%から38%へと落ちている。
だが、この調査結果は、現在でも20歳から69歳の5割強が趣味を常に楽しんでおり、4割弱は「一生もの」の趣味を持っているとも読める。あいかわらず、趣味人口は大きいのである。
次に、2008年の数字で性年代別の違いを見てみよう。「1年を通して楽しんでいる趣味がある」という人の率は、男性では管理職として仕事の忙しい50代に向かって低下し、退職者の増える60代で回復する。女性では、子育てが忙しい30代が底になっている(グラフ1)。

「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」という人の率は、男性では年代ごとの差が少ない。「1年を通して楽しんでいる趣味がある」と回答した人には、軽い気持ちで楽しむ層も含まれるが、「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」と答えた人の場合、趣味への「思い入れ」は極めて強いということができる。女性では、30代・40代で「一生もの」の趣味を持っている人の率が低下する。いずれにしても、男性で4割、女性で3割弱から4割の「コアになる趣味愛好家」がいることが分かる(グラフ2)。

10年選手が趣味市場を活性化する
「一生を通じて楽しめる趣味を持っている」と答えた人が、10年間、その趣味を続けたとしよう。何ごとも、「10年選手」となれば腕前は上達する。彼らは、プロ仕様の道具を購入し、作品展示の場を求め、自分が会得した「うんちく」を人にも教えたくなる。
「人に教えられる趣味やスポーツがある」と自負する人は、全体平均で2割を超えている。グラフ3は、その性年代別の違いを表したものである。「趣味」だけでなく、「趣味やスポーツ」と質問しているので、若年層の比重が高くなっているが、「先生」になれるほど趣味やスポーツに打ち込む人は、かなり多いことが分かる。

彼らは、国内外を問わず、それぞれの趣味やスポーツの「本場」を見学し、自分の目を磨こうとするから、旅行需要を生み出すことになる。ブログを書く人も多い。交流サイト(SNS)の利用者が5000万人を突破したが、そのうちコミュニティの参加者は6割弱。趣味の「10年選手」は、コミュニティに集まって情報交換をしている。最近、トランクルームの需要が高まっているという。趣味用品を置く場所として活用する人も多い。住宅産業では、夫婦がともに自分の趣味を楽しめるように、間取りを工夫する会社が増えている。趣味を核にすれば、多様な市場を開拓することができる。
性年代別に見る愛好する趣味ランキング
性年代別の趣味ランキングを見ていこう。1割以上の回答者が「よくする」という趣味(スポーツを含む)を5位までまとめてみた。10%を超すものがない場合、その順位は空欄とした。
スポーツ系の趣味ランキングは、男性に比べて女性に空欄が目立つ(表1)。男性の方が、愛好者が10%以上いるスポーツが多いことを示している。男性では、サッカーが若年層、ゴルフが中年以上という図式が見て取れる。スキーは40代までファンがいる。野球は全年代で楽しんでいる人が見られる。50代以上では、登山(ハイキングを含む)が上位にランキングされてくる。
女性では、50代において、1割以上の回答者が「よくする」と答えた種目が皆無であった。60代になると、登山、ダンス(エアロビクスを含む)、水泳、ヨガ(太極拳を含む)など、意識して運動をする人が増えるようだ。女性では、スポーツ観戦を趣味として挙げる人が少ない。

遊技系の趣味も男性優位である(表2)。男性では40代まで、女性では30代まで、TVゲームが入っている。特に20代男性では、4割の人が「よくする」趣味として回答した。男性では、パチンコが全年代、競馬が30代以上でポピュラーな遊びである。カラオケは、男性女性を問わず、全年代で上位を占めている。

屋外系の趣味(旅行とショッピングは除く)にも、性年代別の特徴がよく現れている(表3)。男性では、全年代でドライブが上位に入った。20代男性では、オートバイが12%、散歩が11%となり、動と静という対照的な趣味が見られる。30代以上の男性では、釣り好きが2割前後、安定して存在する。50代以上では、園芸(ガーデニング)も人気だ。
食べ歩きは、女性に人気のある趣味行動である。遊園地(テーマパークを含む)も、上位に入っている。20代では本人が楽しみ、30代以上では子どもと楽しむということだろうか。女性では、30代以上において園芸ファンが多い。ホームセンターなどのよい顧客でもある。

文化・コンテンツ系は、映画・音楽・美術鑑賞に加えて、パソコン、ビデオ・カメラ撮影なども趣味として挙げる人が多い(表4)。読書は男女ともに年代を問わず人気があるが、美術鑑賞は女性の20代と60代のみである。伝統的な趣味である編物・手芸は、女性の30代から50代が支持している。最近、デパートでは手芸コーナーを充実させるところもある。

以上、性年代別に10%以上のファンがいる趣味ランキングを見てきた。こうした1割の層が10年間、同じ趣味・スポーツに打ち込んだ時、そこには大きな「うんちく」市場が生まれる。こだわりのあるリピーター客は、マーケティングにとって重要なコアターゲットである。
(掲載 : JRガゼット・2010年8月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。