6つのエコライフスタイル
~あなたはどんなエコ生活がお好みですか?~
博報堂生活総合研究所 主任研究員
筧 裕介
【生活定点調査】の「地球環境の保護につながる行動を実行していますか」という質問で、2008年に調査開始以来初めて「はい」が50%を超えました(グラフ1)。日本人全体でエコな取り組みが始まっています。生活者はどんな取り組みを実施しているのでしょうか。ある人は自宅に太陽光発電を導入しているかもしれません。ある人は徒歩や自転車で移動するようにしているかもしれません。生活者は個々人のライフスタイルに応じた取り組みを始めています。そこで、生活者に支持されているエコライフスタイルを探るため、生活者に対して6つのシナリオを提示し、意見を聴いてみました。

北陸地方在住者対象のエコライフスタイル調査
東京や大阪のような大都市に暮らす生活者と地方都市に暮らす生活者、どちらが地球環境に負荷が少ない生活をしているだろうか? 人口1人当たりのCO2排出量という視点で言うと、断然前者である。一見すると、地方都市生活者の方がエコのように感じるかもしれない。しかし、東京は世界でも有数の低炭素都市である。東京生活者は地方都市生活者に比べて、圧倒的に公共交通を利用する機会が多い。地方では自動車で移動するのが当たり前で、徒歩や自転車でも行ける近くのコンビニへも自動車で行くことが多い。結果として、バス、電車、自転車、徒歩中心の大都市生活者は、自動車中心の地方都市生活者に比べてCO2排出量が少なくなる。また、大都市生活者は地方都市生活者に比べて、住宅の面積が狭く、マンション等の集合住宅に暮らしている人も多いため、家庭のエネルギー(電気、ガス等)効率が高い。知らず知らずのうちにエコな生活を送っていることになる。
逆に地方都市の生活者は、徒歩や自転車を使う、クリーンなエネルギーを使用するなどの対策を講じることで、日常生活から排出されるCO2を大幅に削減できる可能性がある。
そこで、今回は地方都市に暮らしている生活者を対象にした調査を実施することとし、対象地域として北陸地方(石川県、富山県、福井県)を選んだ。
6つのエコライフスタイル
調査対象者には、6つのエコライフスタイルを提示した(表1)。いずれも、移動及び家庭のエネルギー使用量を抑えることでCO2排出量を10%以上削減できるライフスタイルである。エコなライフスタイルには2タイプがあると言われている。都市型と分散型である。都市型では「都市型コンパクト生活」(以下、LS1コンパクト)、「公共交通使いこなし生活」(以下、LS2公共交通)という2つのシナリオが考えられる。富山市、福井市など北陸地方の主要都市では、中心市街地と呼ばれる昔からの繁華街の商業・文化・住宅施設を再開発し、中心駅を核として路面電車や幹線バスを整備するコンパクトシティという政策が推進されている。そこで実現されるのは、中心市街地もしくはJR駅・電停・バス停徒歩圏に居住し、徒歩や公共交通で移動する都市型のライフスタイルである。

分散型には4つのシナリオがある。「低燃費モビリティ生活」(以下、LS3低燃費)は、ハイブリッド自動車などを利用して自動車からのCO2を削減するシナリオである。郊外の自然に恵まれ、広々とした住環境で暮らし、低燃費の自動車で移動する。「エコホーム生活」(以下、LS4エコホーム)と「クリーンエネルギー生活」(以下、LS5エネルギー)は、家庭エネルギーに起因するCO2を削減するライフスタイルだ。前者は住宅の新改築を中心としたシナリオで、郊外に暮らし、高気密住宅で省エネ家電を使用する。後者は太陽熱温水器・太陽光発電導入を中心としたシナリオで、郊外に暮らし、クリーンエネルギーや省エネ家電を利用する。「地域コミュニティ生活」(以下、LS6コミュニティ)は移動と家庭、両方のエネルギーを削減するシナリオで、移動の少ない地域に密着した生活を送り、自宅の省エネを試みるライフスタイルである。
エコライフスタイルの実行意向
この6つのエコライフスタイルに対する実行意向を、絶対評価(「ぜひ実行したい」から「まったく実行したくない」までの4段階)、相対評価(6つのシナリオの順位づけ)で調査した。
グラフ2は、6つのエコライフスタイルに対する絶対評価である。実行意向率(「ぜひ実行したい」+「やや実行したい」)では、1位がLS3低燃費、2位がLS4エコホーム、3位がLS5エネルギーと続く。LS1コンパクトのみ50%を下回った。

グラフ3は、相対評価(対象者の1位選択スタイル)である。絶対評価でいずれも「実行したくない」と回答した対象者は「LS0意向なし」とした。1位がLS3低燃費、2位にLS1コンパクトが続く。絶対評価で最下位のLS1コンパクトが、相対評価では2位と評価が上がった。過半数の生活者が好まないものの、一部(約20%)の生活者が最も好むライフスタイルと評価、すなわち好き嫌いがはっきり分かれるライフスタイルだと推測される。

6ライフスタイルいずれも受容しない層は5.8%に過ぎず、6ライフスタイルはいずれも10%以上の評価を得ており、生活者が求めるエコライフスタイルは一元ではなく、多様なことが分かる。
属性別エコライフスタイル実行意向
表2は、属性別の意向ライフスタイルをまとめたもので、網かけの部分が各属性の第1位ライフスタイルである。男女間で大きな差はないが、性年代では違いが見えてくる。

男性は若年層で、女性は高齢層でLS1コンパクトの評価が高い。また、LS1コンパクトは年収300万円未満の層と単独世帯者からの評価が高く、このスタイルを好む特定の属性の生活者が存在していることが分かる。人口密度(調査対象者の居住市町村の人口密度)で見ると、低密度の300~450人未満層ではLS3低燃費が、高密度の900人未満層ではLS1コンパクトが支持されており(900人以上層で2つが拮抗)、現在の居住地で実行可能なスタイルへの支持が高いことが分かる。
多様なエコライフスタイルに応えるために
年々、気候がおかしくなっていることは誰もが実感しているのではないだろうか。今年の3~4月は、夏のように半袖1枚で過ごせる日と、真冬のコートが手放せないような日が入り混じっていた。こうした気候変動の影響を最小限に抑えるための活動が日本中、世界中で行われている。私たちの生活を見直すこともその1つである。ただし、毎日の生活を犠牲にしたり、無理が生じるスタイルでは長続きしない。生活者各自が、自分の生活に適した形でエコライフスタイルを取り入れていくことが重要となる。今回提示した6つのシナリオは、相対評価でいずれも1割以上の生活者から支持された。また、6スタイルいずれも実行したくないという回答者はわずか5%であった。生活者の多様な価値観に応えられる多様なエコライフスタイルが普及することが、生活者にとっての幸せなエコに違いない。
(掲載 : JRガゼット・2010年7月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。
「エコライフスタイルに関する調査」
調査時期: 2009年12月15~17日
対象エリア:北陸3県(福井・富山・石川)
調査対象:調査会社保有の調査モニター
回 答 者:20~69歳男女762名
*国勢調査2005に基づき、人口構成比に応じて、性年代で割付
調査方法:インターネット調査

北陸地方在住者対象のエコライフスタイル調査
東京や大阪のような大都市に暮らす生活者と地方都市に暮らす生活者、どちらが地球環境に負荷が少ない生活をしているだろうか? 人口1人当たりのCO2排出量という視点で言うと、断然前者である。一見すると、地方都市生活者の方がエコのように感じるかもしれない。しかし、東京は世界でも有数の低炭素都市である。東京生活者は地方都市生活者に比べて、圧倒的に公共交通を利用する機会が多い。地方では自動車で移動するのが当たり前で、徒歩や自転車でも行ける近くのコンビニへも自動車で行くことが多い。結果として、バス、電車、自転車、徒歩中心の大都市生活者は、自動車中心の地方都市生活者に比べてCO2排出量が少なくなる。また、大都市生活者は地方都市生活者に比べて、住宅の面積が狭く、マンション等の集合住宅に暮らしている人も多いため、家庭のエネルギー(電気、ガス等)効率が高い。知らず知らずのうちにエコな生活を送っていることになる。
逆に地方都市の生活者は、徒歩や自転車を使う、クリーンなエネルギーを使用するなどの対策を講じることで、日常生活から排出されるCO2を大幅に削減できる可能性がある。
そこで、今回は地方都市に暮らしている生活者を対象にした調査を実施することとし、対象地域として北陸地方(石川県、富山県、福井県)を選んだ。
6つのエコライフスタイル
調査対象者には、6つのエコライフスタイルを提示した(表1)。いずれも、移動及び家庭のエネルギー使用量を抑えることでCO2排出量を10%以上削減できるライフスタイルである。エコなライフスタイルには2タイプがあると言われている。都市型と分散型である。都市型では「都市型コンパクト生活」(以下、LS1コンパクト)、「公共交通使いこなし生活」(以下、LS2公共交通)という2つのシナリオが考えられる。富山市、福井市など北陸地方の主要都市では、中心市街地と呼ばれる昔からの繁華街の商業・文化・住宅施設を再開発し、中心駅を核として路面電車や幹線バスを整備するコンパクトシティという政策が推進されている。そこで実現されるのは、中心市街地もしくはJR駅・電停・バス停徒歩圏に居住し、徒歩や公共交通で移動する都市型のライフスタイルである。
分散型には4つのシナリオがある。「低燃費モビリティ生活」(以下、LS3低燃費)は、ハイブリッド自動車などを利用して自動車からのCO2を削減するシナリオである。郊外の自然に恵まれ、広々とした住環境で暮らし、低燃費の自動車で移動する。「エコホーム生活」(以下、LS4エコホーム)と「クリーンエネルギー生活」(以下、LS5エネルギー)は、家庭エネルギーに起因するCO2を削減するライフスタイルだ。前者は住宅の新改築を中心としたシナリオで、郊外に暮らし、高気密住宅で省エネ家電を使用する。後者は太陽熱温水器・太陽光発電導入を中心としたシナリオで、郊外に暮らし、クリーンエネルギーや省エネ家電を利用する。「地域コミュニティ生活」(以下、LS6コミュニティ)は移動と家庭、両方のエネルギーを削減するシナリオで、移動の少ない地域に密着した生活を送り、自宅の省エネを試みるライフスタイルである。
エコライフスタイルの実行意向
この6つのエコライフスタイルに対する実行意向を、絶対評価(「ぜひ実行したい」から「まったく実行したくない」までの4段階)、相対評価(6つのシナリオの順位づけ)で調査した。
グラフ2は、6つのエコライフスタイルに対する絶対評価である。実行意向率(「ぜひ実行したい」+「やや実行したい」)では、1位がLS3低燃費、2位がLS4エコホーム、3位がLS5エネルギーと続く。LS1コンパクトのみ50%を下回った。

グラフ3は、相対評価(対象者の1位選択スタイル)である。絶対評価でいずれも「実行したくない」と回答した対象者は「LS0意向なし」とした。1位がLS3低燃費、2位にLS1コンパクトが続く。絶対評価で最下位のLS1コンパクトが、相対評価では2位と評価が上がった。過半数の生活者が好まないものの、一部(約20%)の生活者が最も好むライフスタイルと評価、すなわち好き嫌いがはっきり分かれるライフスタイルだと推測される。

6ライフスタイルいずれも受容しない層は5.8%に過ぎず、6ライフスタイルはいずれも10%以上の評価を得ており、生活者が求めるエコライフスタイルは一元ではなく、多様なことが分かる。
属性別エコライフスタイル実行意向
表2は、属性別の意向ライフスタイルをまとめたもので、網かけの部分が各属性の第1位ライフスタイルである。男女間で大きな差はないが、性年代では違いが見えてくる。

男性は若年層で、女性は高齢層でLS1コンパクトの評価が高い。また、LS1コンパクトは年収300万円未満の層と単独世帯者からの評価が高く、このスタイルを好む特定の属性の生活者が存在していることが分かる。人口密度(調査対象者の居住市町村の人口密度)で見ると、低密度の300~450人未満層ではLS3低燃費が、高密度の900人未満層ではLS1コンパクトが支持されており(900人以上層で2つが拮抗)、現在の居住地で実行可能なスタイルへの支持が高いことが分かる。
多様なエコライフスタイルに応えるために
年々、気候がおかしくなっていることは誰もが実感しているのではないだろうか。今年の3~4月は、夏のように半袖1枚で過ごせる日と、真冬のコートが手放せないような日が入り混じっていた。こうした気候変動の影響を最小限に抑えるための活動が日本中、世界中で行われている。私たちの生活を見直すこともその1つである。ただし、毎日の生活を犠牲にしたり、無理が生じるスタイルでは長続きしない。生活者各自が、自分の生活に適した形でエコライフスタイルを取り入れていくことが重要となる。今回提示した6つのシナリオは、相対評価でいずれも1割以上の生活者から支持された。また、6スタイルいずれも実行したくないという回答者はわずか5%であった。生活者の多様な価値観に応えられる多様なエコライフスタイルが普及することが、生活者にとっての幸せなエコに違いない。
(掲載 : JRガゼット・2010年7月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。
「エコライフスタイルに関する調査」
調査時期: 2009年12月15~17日
対象エリア:北陸3県(福井・富山・石川)
調査対象:調査会社保有の調査モニター
回 答 者:20~69歳男女762名
*国勢調査2005に基づき、人口構成比に応じて、性年代で割付
調査方法:インターネット調査