若者の消費特性と価値観
~買わない若者の背景を考える~
博報堂生活総合研究所 研究員
斎藤 竜太
若者が消費離れしているという話をよく耳にします。まるで悪者のように言われることもありますが、本当に消費意欲がなくなってしまったのでしょうか?
グラフ1は【生活定点調査】の「値段が高くても、気に入れば買ってしまう方だ」という項目を若年層、ミドル男性、ミドル女性、エルダー層の4つのセグメント(図)に分け、時系列でグラフにしたものです。確かに、若年層の値は10年前と比較して減少していますが、それは他の層でも同様であり、今も若年層の方が優位にあることは明らかです。


今月は、前述の4セグメントの比較分析において、若年層に特徴的だった項目を紹介しながら、改めて若者のプロファイルと消費特性を探っていきたいと思います。
ナンダカンダ言ってもポジティブな若年層
表1は、生活全般に関する意識で特徴的だった項目である。若年層は、この不況下においても自分の将来に対してポジティブであり、こだわりを持って、刺激のある生き生きとした暮らしを求めている。

そして、学びや教育に対してこだわる人が49.9%とほぼ半数に達することからも分かるように、自己成長が重要なテーマであり、「自分自身のことをもっと深く知りたい」という自己探求欲求、「技術や資格を身につけたい」という能力獲得欲求が高い。もちろん、学びだけではなく、趣味や遊びにこだわるという回答も67.3%を占め、レジャーやトレンドなどの情報に敏感である。また、ファッションを通じた個性の発揮や、服や小物の自作による自己表現欲求も見られるほか、音楽や映画、ゲームなどのコンテンツへの関心も高い。
このように、今の若年層も昔とまったく変わってしまったわけではなく、若者らしい部分をちゃんと備えているのである。
感性と直感を重視した消費の意思決定
次に、消費に対する若年層の意識を見ていこう(表2)。前述の「値段が高くても、気に入れば買ってしまう」、また「欲しいもののためには今の生活の何かを削ることができる」「自分にとっての『いいもの』は、高くても買う」といった項目が比較的高く、やはり若者が消費を嫌っていると決めつけるのは早計だろう。

消費の意思決定は特徴的である。「ものを買う時には、機能よりもデザインを重視する」「ピンとくる・こないという感覚で判断して決めることが多い」という回答が約4割も存在している。両者の10年の変化(グラフ2・3)を見ても、確かに高まってきていることが分かるだろう。特に20代男性では、デザインを重視する人が98年の23.8%から08年の37.3%へと大きく伸びている。男性は機能やスペックを重視すると思われがちだが、若い層の男性ではデザインも重要なファクターになり、感性を重視した選択をする人が増えてきているようだ。

見た目に左右されるというと未熟さの表われと思う方もいるだろうが、彼ら彼女らが育ってきた時代を考えれば、機能が十分なのは当たり前のことである。また、モノや情報があふれる現代においては、最後の決断は直感を働かせなければ難しい。自らの生活空間やスタイルと一致するかを大切にし、それを直感的に判断することができる高度な消費感覚を持っているととらえるべきだろう。
コミュニケーションが若者の生活の力点
表3は、コミュニケーションに関連する特徴を集めたものである。人とのつながりが希薄な時代と言われるが、若年層では7割以上が「人と交際する時には、深くつきあいたい方だ」と回答している。また、彼ら彼女らは学生時代からケータイを利用していた人がほとんどということもあり、「携帯電話は私の生活になくてはならないものだと思う」人も3分の2を占めている。

お金をかけている分野では、交際や外食といった項目が比較的高く、「友人に、誕生日などでプレゼントをすることが多い」という項目も高い。特にプレゼントは特徴的であり、グラフ4の時系列変化を見ても、近年大きく増加している。女性だけでは、と思う方もいるかもしれないが、むしろ20代男性の方が増加幅は大きく、98年の25.0%から08年には36.4%となっている。

贈与は太古の昔から存在する絆を形成するための原始的な手段の1つである。それが、この現代日本において高まってきているというのは、おもしろい傾向のように思われる。そして、私の周りを見渡す限り、それは何も高価なモノを贈りあっているわけではない。プライベートな絆形成の潤滑油として、また日常に祝祭の彩りを加えるスパイスとして、浸透してきているのだろう。
◆ ◆ ◆
今月は若者の特徴や変化について見てきたが、どのような感想をお持ちになっただろう? 確かにいまの若者は、自動車や海外旅行のようなこれまでの消費社会を象徴するものに対しては消極的な面があるようだ。しかし、この不況下において、自分のためのモノではなく、他者との関係にお金を使う意識を高めているということは非常に示唆的である。若者が始めている絆を中心とした消費の形―関係性消費とでもしておこう―は、今後もビジネスチャンスとして拡大していくであろうし、また人間を中心としたポスト大量消費社会を考えるうえでもヒントになるのではないだろうか。
(掲載 : JRガゼット・2010年5月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。
グラフ1は【生活定点調査】の「値段が高くても、気に入れば買ってしまう方だ」という項目を若年層、ミドル男性、ミドル女性、エルダー層の4つのセグメント(図)に分け、時系列でグラフにしたものです。確かに、若年層の値は10年前と比較して減少していますが、それは他の層でも同様であり、今も若年層の方が優位にあることは明らかです。
今月は、前述の4セグメントの比較分析において、若年層に特徴的だった項目を紹介しながら、改めて若者のプロファイルと消費特性を探っていきたいと思います。
ナンダカンダ言ってもポジティブな若年層
表1は、生活全般に関する意識で特徴的だった項目である。若年層は、この不況下においても自分の将来に対してポジティブであり、こだわりを持って、刺激のある生き生きとした暮らしを求めている。

そして、学びや教育に対してこだわる人が49.9%とほぼ半数に達することからも分かるように、自己成長が重要なテーマであり、「自分自身のことをもっと深く知りたい」という自己探求欲求、「技術や資格を身につけたい」という能力獲得欲求が高い。もちろん、学びだけではなく、趣味や遊びにこだわるという回答も67.3%を占め、レジャーやトレンドなどの情報に敏感である。また、ファッションを通じた個性の発揮や、服や小物の自作による自己表現欲求も見られるほか、音楽や映画、ゲームなどのコンテンツへの関心も高い。
このように、今の若年層も昔とまったく変わってしまったわけではなく、若者らしい部分をちゃんと備えているのである。
感性と直感を重視した消費の意思決定
次に、消費に対する若年層の意識を見ていこう(表2)。前述の「値段が高くても、気に入れば買ってしまう」、また「欲しいもののためには今の生活の何かを削ることができる」「自分にとっての『いいもの』は、高くても買う」といった項目が比較的高く、やはり若者が消費を嫌っていると決めつけるのは早計だろう。

消費の意思決定は特徴的である。「ものを買う時には、機能よりもデザインを重視する」「ピンとくる・こないという感覚で判断して決めることが多い」という回答が約4割も存在している。両者の10年の変化(グラフ2・3)を見ても、確かに高まってきていることが分かるだろう。特に20代男性では、デザインを重視する人が98年の23.8%から08年の37.3%へと大きく伸びている。男性は機能やスペックを重視すると思われがちだが、若い層の男性ではデザインも重要なファクターになり、感性を重視した選択をする人が増えてきているようだ。

見た目に左右されるというと未熟さの表われと思う方もいるだろうが、彼ら彼女らが育ってきた時代を考えれば、機能が十分なのは当たり前のことである。また、モノや情報があふれる現代においては、最後の決断は直感を働かせなければ難しい。自らの生活空間やスタイルと一致するかを大切にし、それを直感的に判断することができる高度な消費感覚を持っているととらえるべきだろう。
コミュニケーションが若者の生活の力点
表3は、コミュニケーションに関連する特徴を集めたものである。人とのつながりが希薄な時代と言われるが、若年層では7割以上が「人と交際する時には、深くつきあいたい方だ」と回答している。また、彼ら彼女らは学生時代からケータイを利用していた人がほとんどということもあり、「携帯電話は私の生活になくてはならないものだと思う」人も3分の2を占めている。

お金をかけている分野では、交際や外食といった項目が比較的高く、「友人に、誕生日などでプレゼントをすることが多い」という項目も高い。特にプレゼントは特徴的であり、グラフ4の時系列変化を見ても、近年大きく増加している。女性だけでは、と思う方もいるかもしれないが、むしろ20代男性の方が増加幅は大きく、98年の25.0%から08年には36.4%となっている。

贈与は太古の昔から存在する絆を形成するための原始的な手段の1つである。それが、この現代日本において高まってきているというのは、おもしろい傾向のように思われる。そして、私の周りを見渡す限り、それは何も高価なモノを贈りあっているわけではない。プライベートな絆形成の潤滑油として、また日常に祝祭の彩りを加えるスパイスとして、浸透してきているのだろう。
◆ ◆ ◆
今月は若者の特徴や変化について見てきたが、どのような感想をお持ちになっただろう? 確かにいまの若者は、自動車や海外旅行のようなこれまでの消費社会を象徴するものに対しては消極的な面があるようだ。しかし、この不況下において、自分のためのモノではなく、他者との関係にお金を使う意識を高めているということは非常に示唆的である。若者が始めている絆を中心とした消費の形―関係性消費とでもしておこう―は、今後もビジネスチャンスとして拡大していくであろうし、また人間を中心としたポスト大量消費社会を考えるうえでもヒントになるのではないだろうか。
(掲載 : JRガゼット・2010年5月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。