春よ来い。そして、春が来たら。
~「そもそも」の季節、新しい発見を~
博報堂生活総合研究所 上席研究員
古澤 直木
4月になりました。春の訪れを待ちわびていた方も多いことでしょう。この時期は自然の変化を感じる機会も色々とあって、他の季節と比べても、とりわけ春が好き、という方もたくさんいるのでは。
今月は、『生活定点調査』のデータから、生活者の五感や季節との関わりを眺め、さらにそこから、新しい生活者の行動様式について考えていきたいと思います。
あなたの五感は!?
春になると、風の匂いや空の色、花や緑など、身の周りで自然の変化を感じ取るチャンスが多い。生活者は、自分の感覚について、どうとらえているのだろうか。『生活定点調査』によると、「ふだんの暮らしの中で、五感全体で、敏感に暮らしている」と回答した人は、2008年で全体の56.0%(グラフ1)。ここ数回の調査で回答率の推移に大きな変化は見られず、半数以上の人は、五感を敏感に働かせて生活していると答えている。

2008年の回答率を性別で見ると、男性は敏感だと答えた人が49.3%と5割を切っているのに対して、女性は62.8%と6割強が敏感だと回答している。性・年代別では、男性は若い年代ほど敏感だと答える人が多いが、女性は年代で大きなバラツキは見られない(グラフ2)。

では、五感のそれぞれについてはどうか。2008年の調査で「ふだんの暮らしの中で、それぞれの感覚について、敏感に暮らしている」と回答した人の結果はグラフ3のとおりである。全体でスコアの高い順に並べると、①味覚67.3%、②視覚62.3%、③嗅覚60.2%、④聴覚50.9%、⑤触覚48.8%となっている。
読者の皆さんは、ご自身と比べてみてどうだろう。ふだんの暮らしのなかで、どのくらい感覚を働かせているだろうか。

季節ごとの定番行動
『生活定点調査』では、季節ごとの行事や習慣(歳時記)についても、毎回質問をしている。この1年間に行ったり、参加したことがある歳時記についてたずねた結果をランキングにしたのが表である。

トップ6は、ここ10年(5回の調査)で、順位に多少の変動はあるものの、項目は同じである。2008年の結果を見ると、1位「大みそかに年越しそばを食べた」、2位「家族の誕生日の祝いをした」、3位「お節料理を食べた」、4位「初詣をした」、5位「年末の大そうじをした」、6位「忘年会をした」となっている。生活者が1年間の行事として習慣にしているものは、「誕生日」を除くと年末年始モノが多く、6割から7割の人が行っている。
では、春の風物イベントはどうか。この春、すでに行かれた方もいると思うが、「お花見に出かけた」はこの10年間、5割程度の回答率で10位前後を推移。「ゴールデンウィークに遊びに出かけた」は40%台で、12~15位の間をキープ。ちなみに夏の風物イベント「花火大会に行った」は20位までのランクには入っておらず、23~25位(回答率は約3割)に位置している。
この結果から、生活者の季節との関わりは冬、特に年末年始の行事が多数を占めており、春にはまだ、人々が新たな習慣や行動を始めるチャンスがあることが推察される。
春、思い切って新しく
生活総研では毎年、年初に『生活動力』という未来予測レポートを発表している。最新版『生活動力2010』のタイトルは「態度表明社会」。世界同時不況から1年余り、社会全体が抜本的な見直しを迫られるなか、企業や政府だけでなく、生活者もゼロベースで生き方の転換を図ろうとしている。2009年10月に我々が実施した『態度表明調査』でも、近年「思い切ってやめたことがある」人は41.8%、「思い切って新たに始めたことがある」人は44.1%という結果が出ている。
調査で得られた生活者の生の声では、「男も料理のひとつぐらいできた方がいい」と【そもそもの発想】をし、「男の料理教室に通い始めた」という【おおやけな行動】の結果、「たまに台所に立つと、妻に喜ばれる」と思わぬ【しあわせの発見】をした66歳の男性の声があった。また、そもそも「世の中で薄れつつある女性らしさを大切にしたいと思うようになった」から、「ヒールの高い靴を履くように」した結果、「背筋を伸ばすなど、正しい姿勢についての意識が強まった」という発見をした27歳の女性の声も挙がった。
このような【そもそもから考え】→【生き方を決め行動に表す】→【思わぬ幸せを発見する】という「態度表明」の3ステップにより、「感謝・賞賛の喜び」や「新しい観点との出合い」を得た例が数多く見られた。
春は、日本では年度や期が変わる節目のタイミング。周りや自然の変化に自らの五感を研ぎすませ、毎日の生活や習慣を「そもそも」でとらえ直し、新たな行動を起こしてみる。そして、思いもかけない幸せを発見してみるのは、いかがだろうか。
(掲載 : JRガゼット・2010年4月号・株式会社交通新聞社)
調査概要
「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。
「態度表明調査」
調査目的: 日常生活において、生活者が行っている態度表明の具体事例を浮き彫りにする。
調査地域:全国47都道府県
調査対象:15~69歳の男女
調査方法:インターネット調査
調査期間:2009年10月17日(土)~18日(日)
サンプル数:3,340名(有効回収数)
サンプリング: 全国を8地区に分割し、エリア別人口構成比に応じて割付。性年代は10歳刻みで均等割付(10代のみ、他の年代の半数)。