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還暦超え市場

~還減・還増ポイントで考える~

博報堂生活総合研究所 エグゼクティブ・フェロー
関沢 英彦

 団塊の世代も、そのほとんどが還暦を迎えることになりました。人数が多いだけに、経済環境が厳しいなか、消費の下支えの役割を期待されています。今回は、彼らの消費と生活意識について、新しい指標で迫りました。博報堂生活総合研究所が実施する生活定点調査の結果において、還暦超えの60代は、どの程度、全体平均よりも減少する値を示すのか(『還減ポイント』)、あるいは増加する値を示すのか(『還増ポイント』)。この2つの視点から、彼らの消費と生活のエネルギーを測ってみましょう。


加齢に伴い減少するものは?

 還暦超えの60代市場において、全体平均よりも減少するのは、特にどの分野なのか。消費分析の点から興味深い項目について、減少ポイント(男女別の全体平均値から男女別60代の平均値を引いた数値)のランキングをまとめてみた。
 まず、60代男性における『還減ポイント』のランキングを見てみよう(表1)。ご覧のとおり、ハンバーガー、ピザ、スパゲティ、焼肉、ラーメンなどを好む人の率が下がる。特にハンバーガー、ピザ、スパゲティは、「好き」と回答した人の率が20ポイント以上減少する。ただし、大きく低下するとは言っても、還暦を過ぎた男性でもハンバーガーは1割強、ピザは2割、スパゲティは3割の人が「好き」だという。ランキングには入っていないが、サラダについては半数以上の60代男性が好んでいて、男性の全体平均と変わらない。若者のライフスタイルとの結びつきが特に強いメニューについて、低下が目立つようだ。焼肉とラーメンは、「年を取ると消化しきれない」という人が出てくるためであろう。ただし、低下するとは言っても、60代男性の6割前後は焼肉とラーメンを好んでいる。
 食市場以外では、携帯電話、パソコン、インターネットなど、情報機器に関する回答において『還減ポイント』が高かった。携帯電話については、60代男性の保有率は8割近いが、「私の生活になくてはならない」と思っている率は2割強に落ちる。若者とは違って、「仕方がないから携帯電話を使っている」といった傾向が見られる。
 60代女性の『還減ポイント』を見てみよう(表2)。男性との違いは、食べ物よりも、情報行動について全体平均よりも低減する傾向が目立つことだ。加えて、車以外の免許・資格を持っている人が減少する。また、お酒を飲む人が下の年代よりも低くなる。ちなみに60代男性では、お酒を飲む人が全体平均と比べてほとんど減少しない。

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還暦を過ぎると増えることは?

 全体平均よりも、還暦を超えた60代の数値の方が高い項目を見てみよう。男性については、「時間的なゆとりがある」と回答した人の率が20ポイント近く増加し、7割強となっている(表3)。結果として、「国内旅行が趣味」「1年を通して楽しんでいる趣味がある」と回答する人の率も高まる。「何か社会のために役立つことをしたい」と思う人も増えて、4割台になる。「純和風の部屋に憧れがある」という率は、全体平均よりも8ポイント高く、4割強となる。とは言っても半数を切っており、団塊世代においては、その上の世代に見られるような和への志向は弱い。
 女性のランキングを見ると、全体平均の数値よりも2桁増加する項目が4項目あることに気づく(表4)。男性では、「時間的ゆとりがある」という1項目だったのと対照的である。還暦前後の活発な女性たちを「還ギャル」と名づけたが、消費市場にインパクトを与えているのは、やはり女性たちの力が大きいのである。
 60代女性は、「国内旅行が趣味」(4割)、「1年を通して楽しんでいる趣味がある」(6割)、「1年を通して何かスポーツをしている」(3割)、「何か社会のために役立つことをしたい」(5割)、「食べ歩きが趣味」(3割)など、街に出歩き、活動的に過ごしている。ランキングには入っていないが、「私にはいくつになっても学んでいきたいことがある」と回答している60代女性が47%を占めていて、同年代の男性よりも高く、また女性の全体平均と同じ数値を保っている。

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還減・還増ポイントを市場開拓に活用しよう

 高齢化市場についてのデータは極めて多い。あまりに情報があり過ぎて、どう使っていいか分からないほどである。マーケティングのコツとしては、うまく指標を活用することだ。『還減ポイント』『還増ポイント』などの指標を適切に使うことで、還暦を超えた人々が、全体平均とどのように異なるのかが明確に見えてくる。
 『還減ポイント』の高い項目については、どうすれば市場から年配者を「脱落」させずに済むかを考えてみたい。ハンバーガー、ピザ、スパゲティなどは、店内デザインやレシピの変更で、還暦超えの男性客も増やせる。
 『還増ポイント』の高い項目については、より積極的な商品の投入が求められる。60代の男女は、健康だという人が7割を超えている。全体平均とさほど変わらない数値である。元気で、時間的なゆとりのある還暦超えの市場は可能性がある。不況対策として、価格を下げる施策ばかりを考えるのではなく、60代パワーをもっと全開にする前向きの市場開拓が求められる。


(掲載 : JRガゼット・2009年5月号・株式会社交通新聞社)


調査概要

「生活定点」
調査目的 : 2年ごとに同じ質問を、繰り返し同一条件の層の対象者に尋ね、人々の生活動向の変化を量的にとらえる。
調査地域 : 首都40㎞圏(東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城)、阪神30㎞圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
調査対象 : 20~69歳の男女
調査方法 : 訪問留置法
調査時期 : 隔年5月(2008年度:5月14日~6月2日)
サンプル数 : 1992年:1,976名、1994~2002年:2,000名、2004年:3,105名、2006年:3,293名、2008年:3,371名 (有効回収)
男女それぞれ5歳刻みを1グループとして、最も少ないグループでも有効回収数が125人となるように、2005年国勢調査結果に基づきサンプルの割付を行った。
サンプリング : 該当エリアの町丁目別世帯累積表より、1地点10人前後とした時の地点を等間隔で抽出し、該当地点で対象者を設定した。 

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