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安心の番付50

上席研究員
夏山明美

調査概要

生活者が暮らしの中で日々感じ取っている、安心や不安って何だろう?
それを明らかにするため、生活風景に見え隠れする安心や不安を生活総研の調査パネルに発見してもらい、それらの安心と不安の大きさを他の生活者によって評価してもらうという、[生活者による生活者調査]を試みました。ご紹介する安心と不安は、世の中でよく言われがちだけど、どこか遠くの出来事のような安心や不安とは異なる、私たちの身のまわりの生活に馴染みのある、リアルなものです。そんな安心と不安をそれぞれ50ずつ取り上げ、番付(ランキング)分析をした結果、安心を増幅させ、不安を解消させるための生活者の欲求(共感欲求、告知欲求、解放欲求、先見欲求)が見つかりました。

 

夏山明美

調査研究の流れ

1. [ 定性調査 ] 安心と不安の観察報告
狙いと手法 生活総研の調査パネルに自分自身や周囲の人たちの日常観察を通じて、身近な生活の中で実感したり、見聞きしたりする安心と不安を発見してもらいました。集まった926の安心、961の不安は分類を重ねた結果、50の安心、50の不安に集約されました。
対象 18歳〜75歳 男女
生活総研オリジナル調査パネル《生活発見パートナーズ》
サンプル数 336名(有効回収数)
調査手法 郵送留置調査
調査地域 首都圏 (東京、神奈川、千葉、埼玉)
調査時期 2008年10月
質問文 1 Q.私たちの身のまわりの日々の生活の中で、人々を安心させたり、心に安らぎを与えたりする場面・状況、場所・空間、商品・モノ、サービス、情報・コンテンツなどを見つけて、報告してください。あなた自身が安心や安らぎを得るものではなく、他の人が安心や安らぎをえるのではないか、、、と思うものでもかまいません。
日常の生活風景を観察したり、思い出したりしながら、理由とともに、3つお書きください。
質問文 2 Q.私たちの身のまわりの日々の生活の中で、人々を不安にさせたり、心配させたりする場面・状況、場所・空間、商品・モノ、サービス、情報・コンテンツなどを見つけて、報告してください。あなた自身が不安や心配な気持ちになるものではなく、他の人が不安や心配な気持ちになるのではないか、、、と思うものでも構いません。
日常の生活風景を観察したり、思い出したりしながら、理由とともに3つお書きください。
集まった安心と不安の分類結果 50の安心と不安 PDFダウンロード

 

2. [ 定量調査 ] 安心と不安の大きさ評価
狙いと手法 生活総研オリジナル調査パネルによる安心と不安の観察報告から得られた50の安心、50の不安について、その大きさを測る調査を実施しました。調査結果からは、それぞれの安心と不安の力関係が見えてきます。さらに、性別・年代別分析では、各世代が感じる安心と不安の大きさの違いから、それぞれの層の特性を浮き彫りにしました。
対象 15歳〜69歳 男女(中学生は除く)
サンプル数 3,424名(有効回収数)
サンプリング 性年代別に均等割付(ただし、15歳からを対象とした10代は他年代の半数とした)。
さらに、全国を6ブロックに分け、年代別の人口構成比で割り付けた。
調査手法 インターネット調査
調査地域 全国 47都道府県
(北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州)
調査時期 2008年12月
質問文 1 Q.安心についておうかがいします。以下にあげる各項目はあなたにとって、どの程度大きな安心だとお感じになりますか。各項目についてあてはまるものをひとつずつお選びください。
(選択肢)
1.大きな安心 2.やや大きな安心 3.やや小さな安心 4.小さな安心 5.あてはまるものはない
質問文 2 Q.不安についておうかがいします。以下にあげる各項目はあなたにとって、どの程度大きな不安だとお感じになりますか。各項目についてあてはまるものをひとつずつお選びください。
(選択肢)
1.大きな不安 2.やや大きな不安 3.やや小さな不安 4.小さな不安 5.あてはまるものはない
呈示項目 50の安心と不安 PDFダウンロード

 

調査結果

安心の番付
[全体]

家族や友人など、身近な人との交流が安心番付の1位、2位を占めています。
また、食の安全、防犯、保障に関わる項目も上位にランクイン。暮らしの基盤を安定させたいという生活者の願いが番付に映し出されています。

安心の番付 全体(3,424名)

順位 大きな安心だと感じるもの(※)
1 家族との交流 58.4
2 友人との交流 48.7
3 衛生管理が行き届いている飲食店 45.8
4 街灯のともる夜の公園や道路 43.3
5 保険の保障 40.2
6 地元住民や警察による防犯パトロール 37.5
7 入金や登録の確認メール 36.0
7 生産地、生産者などの商品表示 36.0
9 新鮮な食品を売っている店や施設 34.9
10 公共の場所でのルールやマナー 34.7
11 家族からのカエル(帰る)コール 34.2
12 バリアフリーが行き届いた道路や施設 30.9
13 店員や担当者のわかりやすい説明や応対 29.9
14 身体と心をリフレッシュできるお風呂 29.8
15 丁寧な接客・サービスをする店員 28.9
16 ナビゲーションシステムやGPS 27.2
17 あらゆる情報を得られるインターネット 25.8
18 警備会社のホームセキュリティサービス 25.3
19 よく行く場所や行きつけの店 25.1
20 ペットとの触れ合い 24.1
21 街中に設置されている監視カメラ 23.5
22 旅行に出かけること 23.3
23 環境に配慮した商品やサービス 21.8
24 緑が多い店や施設 21.7
25 店や施設の修理サービス 20.6
順位 大きな安心だと感じるもの(※)
26 不審者情報を伝えるメール 19.5
27 インターネットでの座席予約 18.7
28 24時間営業している店や施設 18.5
29 待ち時間が心地よい店や施設 17.1
30 駅のホームに設置してある自動ドア 16.6
31 休憩コーナーのある店や施設 16.5
32 子供の遊び場のある店や施設 15.2
33 店や施設の予約順番待ちシステム 14.9
34 活気のある駅前ビルや商店街 14.7
35 公共交通機関内での人と人との触れ合い 14.5
36 見知らぬ人と交わす挨拶や会話 13.4
37 地元のお祭り 12.6
38 店や施設のポイントカード 12.3
39 社会貢献型の商品や仕組み 12.2
40 店や施設の案内・ガイド・コンシェルジュ 11.5
41 食品や日用品の宅配システム 11.1
42 事実だけを淡々と伝える報道 11.0
42 店や施設のサービスセンター 11.0
44 クレジットカードでの支払い 10.5
45 海外での日本人の活躍 9.7
46 ビュッフェ形式のレストラン 8.7
47 レンタルショップ・レンタルサービス 7.4
48 電子マネーでの支払い 5.3
49 「たくさん売れている」という情報 5.0
50 図柄が描かれた工事現場の塀 4.1

(※)大きな安心+やや大きな安心の合計

[年代別]

10代の安心 ウチで家族と過ごすより、友達や店などソトで感じる大きな安心。
20代の安心 仕事や遊びで忙しい毎日。お風呂タイムはホッとできるひと時。
30代の安心 家族志向が強まる30代。家族の健康や安全に関するものに大きな安心。
40代の安心 カエルコールは残業、パート、塾など、それぞれ多忙な家族をつなぐ安心の連絡網。
50代の安心 公共のルール・マナー、バリアフリーなど、安心領域は子供・家族から社会にも拡大。
60代の安心 健康、老後に意識が向かう時期。食の安全、バリアフリーは大きな安心。

性・年代別の安心Top10のデータはこちら。

不安の番付
[全体]

年老いてからの生活、温暖化による異常気象など将来の暮らしを揺るがす不安が上位にあがっています。また、急病時の病院の受け入れ体制、いつ起こるかわからない大地震など、突発的なトラブルも生活者の心に大きな不安の影を落としています。

不安の番付 全体(3,424名)

順位 大きな不安だと感じるもの(※)
1 年老いてからの生活 55.1
2 異常な行動をしている人 52.6
3 急病時の病院の受け入れ体制 50.4
4 日本の政治経済の混乱 47.6
5 いつ起こるかわからない大地震 47.4
6 温暖化による異常気象 46.8
7 ひと気のない夜の公園や道路 45.3
8 値上がりする生活必需品 43.4
9 何が入っているかわからない外食や加工食品 42.1
10 食品安全に関するニュース 42.0
11 スリやひったくり、空き巣、詐欺 41.4
12 日本の子供たちの将来 40.2
13 身体や心の健康 39.5
14 家族の帰宅の遅れ 39.4
15 コンピューターウィルス 37.9
16 衛生管理が行き届いていない飲食店 37.8
17 見ず知らずの人からの連絡や勧誘 36.1
18 公共の場所でのルールやマナー 34.6
19 支払い額が直前までわからない店や施設 32.2
20 低下する学力や常識力 30.8
21 株価の暴落 30.3
22 個人情報を扱う企業の担当者 28.7
23 インターネット上の悪質な書き込み 28.6
24 過激化する報道 28.0
25 自分や家族が働いている会社の業績 26.8
順位 大きな不安だと感じるもの(※)
26 猛スピードで走る公共交通機関 25.1
27 危険物の廃棄処理 23.7
28 携帯電話の置き忘れや紛失 22.2
29 クレジットカードでの支払い 18.0
30 初めて訪れる場所や店 15.5
31 バリアフリーが遅れている道路や施設 15.4
32 宅配便、出前、修理などの来訪者 15.3
33 混雑する駅のホームやエスカレーター 15.2
34 店員や担当者のわかりにくい説明や応対 14.6
35 携帯電話やパソコンなどに残る履歴 14.2
36 止まったり、遅れたりする公共交通機関 13.8
37 わかりにくい案内表示 12.9
38 電子マネーでの支払い 12.1
39 空き地や空きビル、空きテナント 10.6
39 無知な芸能人やタレント 10.6
41 むき出しで置かれているビュッフェ形式の食べ物 10.0
42 待たされる店や施設 8.8
43 混雑する店や施設 8.7
44 通っていたお店の突然の閉店 8.6
45 電化製品や機器の難しい操作・設定 7.4
46 来店客が少ない店や施設 6.9
46 地上デジタル放送(地デジ)への完全移行 6.9
48 電車やバスなどへの短時間での乗降 6.3
49 機械式で開閉する出入り口やゲート 5.9
50 電化製品や機器による生活行動の自動化 5.3

(※)大きな不安+やや大きな不安の合計

[年代別]

10代の不安 限られたお小遣いでやりくりする10代。お金に絡む不安に悩む。
20代の不安 外出時の犯罪トラブルや外食先の衛生管理が不安。
30代の不安 子育て世代。我が子を含む日本の子供たちの将来、家族の帰宅の遅れが心配。
40代の不安 単独行動が増える家族。不必要に干渉はしないが、家族の帰宅の遅れが気がかり。
50代の不安 自分自身の健康に加え、日本社会の健康状態に対する不安も募る。
60代の不安 身近なことに加えて、日本の社会、地球環境に関するものへと広がる不安。

性・年代別の不安Top10のデータはこちら。

総合分析と提言

番付から見えてきた生活者の欲求
(共感欲求、告示欲求、解放欲求、先見欲求)

ご紹介してきた安心と不安の大きさを示す番付は、生活者の安心増幅欲求、不安解消欲求の優先順位を表しているともいえます。番付上位のあちこちに潜在する、生活者の欲求の断片を束ねていくと、これからの消費を動かす生活者の欲求モデルが姿を表します。

共感欲求

不安と孤立の時代。しかし、本来、社会的生き物であるという本能から、生活者は触れ合いを求めています。多種多様な選択肢があふれ、何が正解かがわからない状況だからこそ、ある限られた人とだけでもいいから、意見や気持ちを通じ合わせたいと生活者は願っています。

[関連項目]

安心 家族や友人との交流、店員や担当者のわかりやすい説明や応対、
丁寧な接客サービスをする店員、よく行く場所や行きつけの店
不安 異常な行動をしている人、見ず知らずの人からの連絡や勧誘

 

告示欲求

成熟の時代に生きる私たち。あふれるモノやサービス、情報の中から、安心できるものを選び抜くには手引きが必要です。商品を選ぶにしても、特長や機能に加え、生産地情報や生産者のこだわり、技術背景、使用者の実感など事実の告知を生活者は求めています。

[関連項目]

安心 入金や登録の確認メール、生産地や生産者などの商品表示、
新鮮な食品を売っている店や施設、あらゆる情報を得られるインターネット
不安 何が入っているかわからない外食や加工食品、食品安全に関するニュース、
インターネット上の悪質な書き込み、支払が直前までわからない店や施設

 

解放欲求

毎日、私たちの身体と心はストレスにさらされています。一歩、外に出れば、人や自動車による混雑の波にのまれ、身動きできないなどといったことも頻繁です。そんな喧騒の中で暮らしているからこそ、生活者は、ほんの少しでもストレスから解放されたい、ひとときの心地よさを求めたいと思うのです。

[関連項目]

安心 バリアフリーが行き届いた道路や施設、
身体と心をリフレッシュできるお風呂、緑が多い店や施設
不安 身体や心の健康

 

先見欲求

変化が多すぎる今の世の中。遠い未来はもちろんのこと、近い将来の見通しも立ちません。先に起こりうるトラブルをすべて回避できないにせよ、その被害を最小限に食い止めるために、生活者は見えない先を見据えたいのです。

[関連項目]

安心 街灯のともる夜の公園や道路、保険の保障、
家族からのカエルコール、ナビゲーションシステムやGPS
不安 年老いてからの生活、急病時の病院の受け入れ体制、
いつ起こるかわからない大地震、日本の子供たちの将来

 

 

番付に潜在する4つの生活者の欲求をご紹介しました。日本の不安と混沌が続く限り、安心の増幅と不安の解消を願う、これらの欲求が消費の鍵となると信じ、これを皆さんへの提言としました。この調査研究が、生活者の欲求を充足させる新しいビジネス開発のヒントになれば幸いです。

博報堂生活総合研究所 c2007 Hakuhodo Institute of Life and Living, HAKUHODO Inc.